受動態(受け身)とは何か:基本の意味と使うタイミング
英語の文には、動作をする側(主語)を中心に述べる「能動態(active voice)」と、動作を受ける側を主語にして述べる「受動態(passive voice)」の2種類があります。日本語にも「〜される」「〜られる」という受け身の表現がありますが、英語の受動態は日本語とは発想も作り方もかなり異なるため、多くの日本人学習者がつまずくポイントです。
たとえば次の2つの文を比べてみましょう。
- 能動態: Tom broke the window.(トムが窓を割った。)
- 受動態: The window was broken by Tom.(窓はトムによって割られた。)
どちらも「窓が割れた」という同じ出来事を述べていますが、何を主語にして、何に焦点を当てたいかが違います。能動態は「誰が何をしたか」に焦点を当て、受動態は「何がどうされたか」「動作を受けたもの」に焦点を当てます。
英語のニュース記事、論文、ビジネス文書、マニュアルなどでは受動態が非常に多く使われます。行為者(誰がやったか)が不明だったり、重要でなかったりする場合、あるいは「客観性」を出したい場合に受動態が好まれるからです。日本語でも「〜が発見された」「〜が使用されている」のような表現をよく使いますが、英語の受動態を正しく使いこなすには、be動詞+過去分詞という構造をしっかり理解する必要があります。
受動態の作り方(形・公式):be動詞+過去分詞の基本構造
英語の受動態は、時制に関係なく必ず次の公式に従います。
主語(動作を受けるもの)+ be動詞+過去分詞(p.p.)+(by+動作をする人・もの)
日本語の「〜される」という語尾の変化だけで受け身を作る発想とは違い、英語ではbe動詞を時制に応じて変化させ、動詞は必ず過去分詞の形にするという2段階のルールがあります。ここが日本人学習者が最初につまずく最大のポイントです。「過去分詞にすればいいだけ」ではなく、「be動詞も正しく活用させる」ことを忘れないようにしましょう。
基本構造の表
| 文の種類 | 語順(公式) | 例文 |
|---|---|---|
| 肯定文 | 主語 + be動詞 + 過去分詞 (+ by 行為者) | The letter is written by her.(その手紙は彼女によって書かれる。) |
| 否定文 | 主語 + be動詞 + not + 過去分詞 | The letter is not written by her.(その手紙は彼女によって書かれない。) |
| 疑問文 | be動詞 + 主語 + 過去分詞 ...? | Is the letter written by her?(その手紙は彼女によって書かれますか。) |
時制ごとのbe動詞の変化表
受動態は「時制+be動詞」の組み合わせを覚えることが最重要です。能動態の時制をそのままbe動詞に反映させ、動詞を過去分詞にする、という手順を機械的に行えるようにしましょう。
| 時制 | 能動態の形 | 受動態の公式 | 例文(能動態→受動態) |
|---|---|---|---|
| 現在形 | 主語 + 動詞 | am/is/are + p.p. | They clean the room. → The room is cleaned.(部屋は掃除される。) |
| 過去形 | 主語 + 動詞の過去形 | was/were + p.p. | They cleaned the room. → The room was cleaned.(部屋は掃除された。) |
| 未来形 | 主語 + will + 動詞原形 | will be + p.p. | They will clean the room. → The room will be cleaned.(部屋は掃除されるだろう。) |
| 現在進行形 | 主語 + am/is/are + 動詞ing | am/is/are + being + p.p. | They are cleaning the room. → The room is being cleaned.(部屋は今掃除されている。) |
| 過去進行形 | 主語 + was/were + 動詞ing | was/were + being + p.p. | They were cleaning the room. → The room was being cleaned.(部屋は掃除されていた。) |
| 現在完了形 | 主語 + have/has + 過去分詞 | have/has + been + p.p. | They have cleaned the room. → The room has been cleaned.(部屋は掃除されてしまった。) |
| 過去完了形 | 主語 + had + 過去分詞 | had + been + p.p. | They had cleaned the room. → The room had been cleaned.(部屋は掃除されていた。) |
| 助動詞(can, must など) | 主語 + 助動詞 + 動詞原形 | 助動詞 + be + p.p. | They must clean the room. → The room must be cleaned.(部屋は掃除されなければならない。) |
学習のポイントとして、この表を横に眺めるのではなく、「be動詞の部分だけを能動態の助動詞・時制に合わせて変化させ、本動詞は常に過去分詞のまま固定する」というルールで覚えると混乱しません。進行形と完了形が組み合わさる「is being + p.p.」「has been + p.p.」の形は特に難しく感じられますが、「進行形のbe動詞(is/was)+being」「完了形のhave/has/had+been」という部品の組み合わせだと理解すれば整理しやすくなります。
能動態から受動態への書き換え手順(4つのステップ)
英文法の書き換え問題でよく出題される「能動態→受動態」の変換は、次の4ステップで機械的に行うことができます。
- 能動態の目的語を、受動態の主語にする
- 動詞を「be動詞+過去分詞」に変える(be動詞は能動態の時制に合わせる)
- 能動態の主語を「by+目的格」にして文末に置く(省略可能な場合も多い)
- 文全体の意味が変わっていないか確認する
例: She writes a letter.(彼女は手紙を書く。)
- ステップ1: 目的語 a letter を主語にする → A letter
- ステップ2: 現在形なので be動詞は is、動詞は過去分詞 written → A letter is written
- ステップ3: 主語 She を by her にして文末へ → A letter is written by her.
- ステップ4: 「手紙は彼女によって書かれる」で意味が一致 ✓
A letter is written by her.(手紙は彼女によって書かれる。)
受動態の主な用法:どんなときに受動態を使うのか
受動態は単なる「書き換え問題のための文法」ではありません。実際の英語では、次のような場面で自然に選ばれます。
-
行為者が誰か分からない、または重要でないとき
My bike was stolen last night.(昨夜、自転車が盗まれた。)
→誰が盗んだか分からないので、盗んだ人(by 〜)は言わない。 -
行為者が言わなくても明らかなとき
He was arrested yesterday.(彼は昨日逮捕された。)
→逮捕するのは警察だと誰でも分かるので by the police は省略されることが多い。 -
動作を受けたもの・出来事そのものに焦点を当てたいとき(ニュースや報道文体)
The new bridge was completed last year.(新しい橋は昨年完成した。)
→「誰が作ったか」より「橋が完成した」という事実が重要。 -
一般的な事実・社会通念・慣習を述べるとき
English is spoken in many countries.(英語は多くの国で話されている。)
→話者を特定しない一般論。 -
科学論文やマニュアル、ビジネス文書などで客観性・フォーマルさを出したいとき
The data was collected over a three-month period.(データは3か月間にわたって収集された。)
→主観(誰が集めたか)を排除し、手順・結果を客観的に述べる。 -
行為者を意図的にぼかしたい、あるいは責任の所在を曖昧にしたいとき
Mistakes were made.(ミスがありました。)
→「誰がミスをしたか」を明言せず、やんわりと伝える表現として使われる。 -
情報の流れ上、旧情報(すでに話題に出たもの)を主語にして文をつなげたいとき
I bought a new laptop. It was made in Japan.(新しいノートパソコンを買った。それは日本製だった。)
→直前の話題(laptop)を主語に続けることで文の流れが自然になる。
日本語の「〜される」との発想の違い:直訳の落とし穴
日本語の受け身は非常に幅広く使われ、英語では受動態にできない場合にも「〜される」という日本語訳がつくことがあります。ここが直訳による誤りの最大の原因です。
自動詞と他動詞の違いに注意
英語の受動態は、原則として他動詞(目的語を取る動詞)からしか作れません。自動詞(目的語を取らない動詞)には受動態が存在しません。日本語では「雨に降られた」「先生に来られた」のように自動詞でも受け身表現(いわゆる「迷惑受身」)が使われますが、英語にはこの発想がありません。
| 誤 ❌ | 正 ⭕ | なぜ誤りか |
|---|---|---|
| I was rained.(雨に降られた、のつもりで) | I got caught in the rain. / It rained on me. | rain は自動詞。受動態にできない。日本語の「迷惑の受け身」は英語には存在しない発想。 |
| It is happened. | It happened. | happen は自動詞。目的語を取らないため受動態不可。 |
| The accident was occurred. | The accident occurred. | occur も自動詞。「事故が起きた」は能動態で表す。 |
学習のポイント: 動詞を覚えるときは「自動詞か他動詞か」を辞書で必ず確認する習慣をつけましょう。日本語の訳語だけを見て「〜される」という形があるからといって、その英語の動詞がそのまま受動態にできるとは限りません。特に happen, occur, arrive, disappear, exist, seem, remain などの自動詞は要注意です。
状態動詞(have, resemble, fit など)は基本的に受動態にしない
日本語の「似ている」「持っている」に引きずられて、resemble や have を無理に受動態にしてしまう誤りもよく見られます。
| 誤 ❌ | 正 ⭕ | なぜ誤りか |
|---|---|---|
| She is resembled by her mother. | She resembles her mother. | resemble(似ている)は状態動詞で、進行形・受動態にしないのが原則。 |
| A car is had by him.(車を持っている、のつもりで) | He has a car. | 所有を表す have は基本的に受動態にできない。 |
混同しやすいポイント:受動態と「be動詞+形容詞(過去分詞由来)」の違い
日本人学習者がよく混同するのが、「受動態(動作)」と「be動詞+状態を表す過去分詞(形容詞化したもの)」の違いです。特に interested, excited, bored, surprised, tired などは、受動態というより「感情の状態」を表す形容詞として使われることが多く、by ではなく前置詞 in, about, with などを伴うのが特徴です。
| 種類 | 例文 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 受動態(動作・出来事) | The window was broken by the storm.(動作) | 窓は嵐によって割られた。 |
| 感情形容詞としての過去分詞(状態) | I am interested in English grammar.(状態) | 私は英文法に興味がある。 |
| 受動態(動作) | The audience was surprised by the announcement.(動作) | 観客はその発表に驚かされた。 |
| 感情形容詞としての過去分詞(状態) | I was surprised at the news.(状態・感情) | 私はそのニュースに驚いた。 |
ネイティブの感覚: interested, bored, tired のような感情を表す過去分詞は、「〜され続けている状態」というより、日本語の「〜している」という形容詞的な意味合いに近い感覚で使われています。無理に「される」という受け身の訳語にこだわらず、「その状態にある」というイメージで捉えると自然に使えるようになります。
日本人がよく間違えるポイントまとめ
| ❌ 誤り | ⭕ 正しい表現 | なぜ間違いなのか |
|---|---|---|
| The letter is wrote by him. | The letter is written by him. | 受動態は必ず「be動詞+過去分詞」。過去形(wrote)ではなく過去分詞(written)を使う。 |
| The room was cleaning by them. | The room was being cleaned by them. | 進行形の受動態は being + p.p.。ing形をそのまま be動詞の後に置くのは誤り。 |
| I am boring.(退屈しているつもりで) | I am bored. | boring は「(人を)退屈させるような」という意味。自分の気持ちを言うときは bored(受け身の状態)を使う。 |
| This news is interesting for me.(興味があるつもりで直訳) | I am interested in this news. / This news is interesting. | interesting(物が人を興味深くさせる)と interested(人が興味を持つ)を混同しない。 |
| English is spoken by people in many countries.(by を不要に多用) | English is spoken in many countries. | 行為者が一般の人々で自明な場合、by 〜 は省略するのが自然。 |
| It was rained yesterday. | It rained yesterday. | rain は自動詞。天候表現は能動態のみ。 |
| The problem was solved by me easily.(何にでも by を付けてしまう) | I solved the problem easily. / The problem was solved easily. | 行為者(by me)が重要でない・自明なときは省略するほうが自然な英語になる。by を付けるかどうかは「情報として必要か」で判断する。 |
自然な例文で確認する受動態の使い方
- This bridge was built in 1930.(この橋は1930年に建設された。)
- My phone was stolen while I was shopping.(買い物をしている間に、私のスマホが盗まれた。)
- The meeting has been postponed until next week.(会議は来週まで延期された。)
- Dinner is being prepared right now.(今まさに夕食が準備されている。)
- This song was written by a famous composer.(この曲は有名な作曲家によって書かれた。)
- The rules must be followed by all students.(規則はすべての生徒によって守られなければならない。)
- A new smartphone will be released next month.(来月、新しいスマートフォンが発売される。)
- The window has been broken since last week.(その窓は先週から割れたままだ。)
- Our house is being painted this week.(今週、私たちの家は塗装されている最中だ。)
- The results were announced yesterday.(結果は昨日発表された。)
by以下(行為者)を省略してよい場合の見分け方
受動態の文で by 〜 を付けるかどうかは、英作文で非常によく迷うポイントです。次の基準で判断すると自然な英文になります。
- 行為者が 一般の人々(people, someone など) で特に情報価値がない → 省略
Rice is grown in Japan.(米は日本で栽培されている。)※by people は不要。 - 行為者が 文脈から明らか(警察、医者、会社など) → 省略されることが多い
He was taken to the hospital.(彼は病院に運ばれた。)※by the ambulance staff は言わなくても分かる。 - 行為者が 重要な新情報 で、聞き手・読み手が知りたい情報 → by 〜 を明示
The Mona Lisa was painted by Leonardo da Vinci.(モナ・リザはレオナルド・ダ・ヴィンチによって描かれた。)
まとめ:受動態を使いこなすための核心ルール
- 受動態の基本公式は be動詞+過去分詞。時制はbe動詞側で表し、動詞は常に過去分詞にする。
- 進行形の受動態は being + p.p.、完了形の受動態は been + p.p. という部品の組み合わせで覚える。
- 受動態が作れるのは基本的に他動詞のみ。rain, happen, occur などの自動詞には受動態がない(日本語の「迷惑受身」の発想を英語に持ち込まない)。
- resemble, have(所有)などの状態動詞は原則として受動態にしない。
- interested, bored, tired などの感情を表す過去分詞は「動作」ではなく「状態」を表すことが多く、by ではなく in / about / with などの前置詞を伴う。
- 行為者(by 〜)は、情報として重要でない・自明な場合は省略するのが自然な英語。何でもかんでも by を付けないこと。
- 能動態から受動態への書き換えは「①目的語を主語に→②be動詞+過去分詞に→③主語をby〜にして文末へ→④意味の一致を確認」の4ステップで機械的に処理できる。