受動態の不定詞・動名詞(Passive Infinitive / Passive Gerund)とは何か
英語には「~される」という受け身の意味を、不定詞(to be done)や動名詞(being done)の形で文の一部に組み込む表現があります。これが「受動態の不定詞(Passive Infinitive)」と「受動態の動名詞(Passive Gerund)」です。
日本人学習者は中学・高校で「受動態=be動詞+過去分詞」という基本形はしっかり習いますが、それが不定詞や動名詞の中に埋め込まれた形(to be surprised, being watched など)になると、とたんに混乱しがちです。理由ははっきりしています。日本語では「見られることが好きではない」「褒められたい」のように、受け身の助動詞「れる・られる」を動詞に直接くっつけて名詞化・不定詞化するため、英語で「to」や「-ing」のあとに「be + 過去分詞」を置くという二段階の変形が直感的に結びつきにくいのです。
このトピックでは、受動態の不定詞・動名詞の作り方(形)、時制ごとのバリエーション(単純形・完了形)、実際にどんな動詞・構文の後で使われるのか、そして日本人が特に間違えやすいポイントを、英文法参考書の標準的な用語(不定詞、動名詞、助動詞、完了形、自動詞/他動詞など)を使いながら体系的に整理します。
受動態の不定詞・動名詞の形(公式)まとめ
まず結論となる「形」を押さえましょう。能動態の不定詞・動名詞と対比すると理解しやすくなります。
| 態 | 不定詞 | 動名詞 |
|---|---|---|
| 能動態(単純形) | to + 動詞の原形 | 動詞の-ing形 |
| 受動態(単純形) | to be + 過去分詞 | being + 過去分詞 |
| 能動態(完了形) | to have + 過去分詞 | having + 過去分詞 |
| 受動態(完了形) | to have been + 過去分詞 | having been + 過去分詞 |
具体例で確認します(動詞 help「助ける」の場合)。
| 形 | 例 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 能動・不定詞 | to help | 助けること |
| 受動・不定詞(単純) | to be helped | 助けられること |
| 受動・不定詞(完了) | to have been helped | 助けられたこと(主節より前の時点) |
| 能動・動名詞 | helping | 助けること |
| 受動・動名詞(単純) | being helped | 助けられること |
| 受動・動名詞(完了) | having been helped | 助けられたこと(主節より前の時点) |
核心公式
受動態の不定詞 = to be + 過去分詞(現在・未来の受け身)
受動態の不定詞(完了形)= to have been + 過去分詞(主節の時制より前の受け身)
受動態の動名詞 = being + 過去分詞(現在・一般的な受け身)
受動態の動名詞(完了形)= having been + 過去分詞(主節の時制より前の受け身)
学習のポイントとして、「be動詞・have動詞そのものを不定詞化・動名詞化する」という感覚を持つと整理しやすくなります。「be helped(助けられる)」という受動態のかたまりを、まるごと to や -ing の後ろに乗せるだけ、と考えるのがコツです。
主な用法:受動態の不定詞(to be + 過去分詞)
-
主語を説明する形容詞的用法(It is + 形容詞 + to be + 過去分詞)
It is important to be respected by your colleagues.
(同僚から尊敬されることは重要だ。) -
願望・意図を表す動詞(want, hope, expect, need など)の目的語として
She wants to be promoted next year.
(彼女は来年昇進したいと思っている。) -
seem / appear など知覚・判断を表す動詞の補語として
The problem seems to be solved already.
(その問題はすでに解決されているようだ。) -
完了形の不定詞で「主節より前に受けた行為」を表す
He is believed to have been injured in the accident.
(彼はその事故でけがをしたと信じられている。) -
too ~ to ... / enough to ... の構文で
The report is too important to be ignored.
(その報告書は無視できないほど重要だ。) -
目的を表す副詞的用法(in order to be + 過去分詞)
He studied hard in order to be accepted into the university.
(彼はその大学に合格するために一生懸命勉強した。)
主な用法:受動態の動名詞(being + 過去分詞)
-
前置詞の目的語として(動名詞は前置詞の後に置ける唯一の動詞形)
She is afraid of being laughed at by her classmates.
(彼女はクラスメートに笑われることを恐れている。) -
主語として
Being invited to the wedding made her very happy.
(結婚式に招待されたことは彼女をとても幸せにした。) -
mind, avoid, enjoy, dislike, remember など動名詞を目的語に取る動詞の後で
I don't mind being asked difficult questions.
(難しい質問をされても私は気にしない。) -
完了形の動名詞で「主節より前に受けた行為」を表す
He admitted having been warned about the risk beforehand.
(彼は事前に危険について警告されていたことを認めた。) -
知覚動詞・使役動詞の目的語補語として(see, hear, watch, get など)
I don't like being told what to do all the time.
(いつも指図されるのは好きではない。)
不定詞と動名詞、どちらの受動態を使うか比較
| 観点 | 受動態の不定詞 | 受動態の動名詞 |
|---|---|---|
| ニュアンス | これから起こる/未実現の行為 | 一般的・習慣的、または経験としての行為 |
| よく続く動詞 | want, hope, expect, seem, need, decide | mind, avoid, enjoy, remember, admit, deny |
| 前置詞の後 | 原則不可(to不定詞は前置詞の目的語になれない) | 可能(動名詞のみ前置詞の後に置ける) |
| 完了形の意味 | 主節より前に受けた行為 | 主節より前に受けた行為(同じ) |
| 例 | He hopes to be chosen.(選ばれることを望む=未来志向) | He enjoys being praised.(褒められることを楽しむ=日常的経験) |
ネイティブの感覚として、不定詞は「まだ実現していない・目指す方向性のある行為」、動名詞は「すでに起きた、または一般的な事実としての行為」という色合いの違いを持つことが多いです。すべての動詞がこの区別に厳密に従うわけではありませんが、この感覚を持っておくと動詞ごとの使い分け(want to be / enjoy being など)が覚えやすくなります。
日本人が特によく間違えるポイント
| ❌ 誤 | ⭕ 正 | なぜ間違いか |
|---|---|---|
| She wants to marry with him.(受動態と無関係だが典型的な直訳ミス) | She wants to marry him. | marryは他動詞。前置詞withは不要(受動態不定詞の話ではないが、直訳癖の一例として注意) |
| He is afraid of laughing at by his classmates. | He is afraid of being laughed at by his classmates. | 「笑われる」という受け身の意味を動名詞に反映し忘れ、能動形のままにしてしまう典型ミス |
| I don't mind ask questions.(受け身の意識が抜け落ちる) | I don't mind being asked questions. | 「質問される」という受け身を表すには being + 過去分詞が必須。動詞の原形やing(能動)のままにしない |
| The work needs to finish by tomorrow.(自動詞的に誤用) | The work needs to be finished by tomorrow. | workは「終わらせられる」対象(他動詞finishの目的語)。needの後は受動態にするのが自然 |
| He seems to injure in the accident. | He seems to have been injured in the accident. | 過去の出来事なので完了形の受動態不定詞(to have been + 過去分詞)が必要。単純形にすると時制がずれる |
| I remember being scold by my teacher.(過去分詞の活用ミス) | I remember being scolded by my teacher. | 不規則動詞・規則動詞の過去分詞活用ミス。scoldは規則動詞なのでscolded |
| I'm interested in study English at this school.(動名詞と原形の混同) | I'm interested in being taught English at this school. | 前置詞inの後は動名詞のみ。さらに「教えられる」という受け身の意味なら being taught が必要 |
学習のポイント:日本語では「〜されることを望む/気にしない/覚えている」のように、「される」という受け身の助動詞が動詞に一体化しているため、英語に直すときに「be動詞+過去分詞」というワンクッションを忘れがちです。英作文をするときは、まず「主語は行為をする側か、される側か」を必ず確認する習慣をつけましょう。「される側」であれば、不定詞・動名詞の中でも必ず be / being を入れる、というルールを徹底することが最大のコツです。
自然な英語例文で確認する
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My daughter loves being read to before bedtime.
(私の娘は寝る前に本を読んでもらうのが大好きだ。) -
The suspect claims to have been forced into signing the confession.
(容疑者は供述書に無理やり署名させられたと主張している。) -
Nobody enjoys being criticized in front of colleagues.
(同僚の前で批判されるのを喜ぶ人はいない。) -
The old bridge is too dangerous to be used anymore.
(その古い橋はもう危険すぎて使えない。) -
We were surprised to be offered a discount without even asking.
(聞いてもいないのに割引を提示されて私たちは驚いた。) -
She apologized for having been misunderstood earlier in the meeting.
(彼女は会議の前半で誤解されていたことについて謝罪した。) -
The new employees expect to be trained thoroughly during their first month.
(新入社員たちは最初の1か月間にしっかり研修を受けることを期待している。) -
He hates being told the same thing twice.
(彼は同じことを二度言われるのが嫌いだ。)
まとめ:受動態の不定詞・動名詞で覚えるべき核心ルール
- 受動態の不定詞は to be + 過去分詞、動名詞は being + 過去分詞 が基本形。
- 主節の時制より前の行為を表すときは、完了形の受動態(to have been + 過去分詞 / having been + 過去分詞)を使う。
- 前置詞(of, in, about, for など)の直後には不定詞は置けない。受け身の意味を表すなら必ず being + 過去分詞 を使う。
- want, hope, expect, seem のような「未来志向・判断」の動詞は不定詞と、mind, enjoy, avoid, remember のような「経験・習慣」の動詞は動名詞と結びつきやすい。
- 日本語では「〜される」が動詞と一体化しているため、英作文の際は主語が「する側」か「される側」かを必ず意識し、される側なら be / being を絶対に落とさないこと。
- 過去分詞の活用(規則・不規則)を正確に押さえておくことも、受動態の不定詞・動名詞を正しく使うための土台になる。