句動詞(Phrasal Verbs)とは何か基本から解説
英語学習を進めていくと、必ずと言っていいほど壁になるのが「句動詞(くどうし)」、英語で言う Phrasal Verbs です。句動詞とは、"get up"(起きる)、"look after"(世話をする)、"give up"(あきらめる)のように、動詞+副詞(Adverb)または動詞+前置詞(Preposition)、あるいは動詞+副詞+前置詞という2〜3語の組み合わせで、1つのまとまった意味を表す動詞表現のことです。
日本の学校英文法では「群動詞」と呼ばれることもありますが、実務上・受験英語・英会話のどの場面でも "phrasal verb"(句動詞)という呼び方が定着しています。本記事では中学・高校英文法の枠組みに沿って、品詞・文型・語順のルールを整理しながら、日本語話者が特につまずきやすいポイントを重点的に解説します。
ポイント: 句動詞の意味は、構成する単語(動詞+前置詞や副詞)の意味を単純に足し算しても分からないことがほとんどです。例えば "give"(与える)+ "up"(上へ)なのに、"give up" は「あきらめる」という意味になります。これは日本語の熟語・慣用句(「腹を割る」「油を売る」など)に近い感覚で、1つの単語のまとまりとして丸ごと覚える必要があります。
句動詞の基本構造(形・公式)
句動詞は大きく分けて3つの構造パターンがあります。それぞれの「形(公式)」を表にまとめます。
| パターン | 公式 | 品詞の内訳 | 例 |
|---|---|---|---|
| ① 動詞+副詞 | V + Adv | 自動詞/他動詞 + 副詞 | wake up(起きる), turn on(つける) |
| ② 動詞+前置詞 | V + Prep | 自動詞 + 前置詞 | look after(世話をする), look for(探す) |
| ③ 動詞+副詞+前置詞 | V + Adv + Prep | 自動詞 + 副詞 + 前置詞 | look forward to(楽しみにする), put up with(我慢する) |
なぜ副詞と前置詞の区別が重要なのか
日本語話者にとって最大の落とし穴は、"up" "on" "off" "out" などの小さい単語をすべて「前置詞」だと思い込んでしまうことです。実は句動詞の中でこれらは多くの場合「副詞(副詞小辞:particle)」として機能しています。この違いが、後述する「目的語の位置」ルールに直結するため非常に重要です。
| 見分け方 | 副詞(Particle)の場合 | 前置詞(Preposition)の場合 |
|---|---|---|
| 後ろに名詞が来るか | 名詞がなくても文が成立する | 直後に必ず名詞・代名詞が来る |
| 目的語の位置 | 動詞と副詞の間に割り込める | 前置詞の直後にしか置けない |
| 例文 | Turn the light off. / Turn it off. | Look after the baby. / Look after him. |
目的語の語順ルール:他動詞型の句動詞(分離動詞)
これは日本人学習者が最も混乱しやすい文法ポイントです。「動詞+副詞」型の他動詞句動詞(分離動詞・Separable Phrasal Verbs)には、明確な語順ルールがあります。
形(公式)
| 目的語の種類 | 語順パターン | 可否 |
|---|---|---|
| 名詞(noun) | V + Adv + 名詞 | ⭕ 可能 |
| 名詞(noun) | V + 名詞 + Adv | ⭕ 可能 |
| 代名詞(it, him, her, them など) | V + Adv + 代名詞 | ❌ 不可 |
| 代名詞(it, him, her, them など) | V + 代名詞 + Adv | ⭕ 必須 |
核心ルール: 目的語が名詞なら語順はどちらでもよいが、目的語が代名詞のときは必ず「動詞+代名詞+副詞」の語順にしなければならない。
- Please turn off the TV. (テレビを消してください)⭕
- Please turn the TV off. (テレビを消してください)⭕
- Please turn off it. ❌(絶対に不可)
- Please turn it off. (それを消してください)⭕ ← 代名詞は必ず間に挟む
なぜこのルールが重要か(ネイティブの感覚)
ネイティブスピーカーの感覚では、"it" や "him" のような代名詞はすでに何を指すか分かっている「軽い」情報なので、文の途中(動詞のすぐ後ろ)に置いて素早く処理し、新しい情報である副詞を文末に残す、という英語のリズムが働いています。日本語の「それを消してください」のように目的語の位置が比較的自由な言語とは発想が異なるため、「代名詞は必ず動詞と副詞の間に挟む」という1点だけを機械的なルールとして暗記するのが最も確実な学習法です。
一方、「動詞+前置詞」型(look after, look for など)は分離できない(不可分動詞・Inseparable Phrasal Verbs)ため、代名詞であっても前置詞の直後に置きます。
- I'm looking for my keys. (鍵を探しています)
- I'm looking for them. ⭕(them は for の直後)
- I'm looking them for. ❌(分離不可)
句動詞の主な用法(自動詞型・他動詞型・3語動詞)
- 自動詞(intransitive)として目的語を取らない用法
ルール: 動作や状態の変化を表し、後ろに目的語は不要。 - The plane took off on time. (飛行機は時間通りに離陸した)
-
I woke up at six this morning. (今朝6時に目が覚めた)
-
他動詞(transitive)+分離可能(separable)な用法
ルール: 目的語が名詞なら副詞の前後どちらにも置けるが、代名詞は必ず間に挟む。 - She picked up the phone. / She picked the phone up. (彼女は電話を取った)
-
She picked it up. (彼女はそれを取った)
-
他動詞+分離不可能(inseparable)=前置詞タイプの用法
ルール: 前置詞と動詞は絶対に離さない。目的語は前置詞の直後。 - He takes after his father. (彼は父親に似ている)
-
We ran into an old friend yesterday. (昨日、旧友にばったり会った)
-
3語から成る句動詞(Phrasal-Prepositional Verbs)の用法
ルール: 動詞+副詞+前置詞の組み合わせで、分離不可能かつ目的語は前置詞の後ろに置く。 - I'm looking forward to seeing you. (お会いできるのを楽しみにしています)
-
Please put up with the noise for a while. (しばらく騒音を我慢してください)
-
比喩的・慣用的な意味に転じる用法
ルール: 元の動詞・副詞の意味から離れ、まったく新しい意味の熟語になっているものが多い。 - I need to give up smoking. (タバコをやめる必要がある)
- Don't give up! (あきらめないで!)
句動詞と前置詞句の違い(比較表)
「動詞+前置詞」型の句動詞は、単なる「前置詞句(副詞句)」と形が似ているため区別が難しく感じられます。以下の表で違いを整理します。
| 比較項目 | 句動詞(Phrasal Verb) | 通常の前置詞句 |
|---|---|---|
| 意味の予測可能性 | 低い(熟語として丸暗記が必要) | 高い(動詞+前置詞の意味の足し算) |
| 例 | look into(調査する) | look into the room(部屋の中を見る) |
| アクセント(強勢) | 副詞・前置詞に強勢が置かれやすい | 前置詞は弱く発音される |
| 受動態化 | できることが多い(The matter was looked into.) | 前置詞句のままでは受動態化しにくい |
学習のポイント: "look into" が「調査する」という句動詞なのか、「〜の中を見る」という文字通りの意味なのかは、文脈で判断するしかありません。辞書アプリで「動詞+前置詞」の組み合わせを見た時は、必ず熟語(イディオム)としての意味も一緒に確認する習慣をつけましょう。
日本人が間違えやすい句動詞のポイント
| ❌ 誤り | ⭕ 正しい表現 | なぜ間違えるのか |
|---|---|---|
| Please turn off it. | Please turn it off. | 代名詞を副詞の後ろに置いてしまう。日本語の「それを消して」の語順につられる。 |
| I look forward to see you. | I look forward to seeing you. | "to" を不定詞の "to" と勘違いする。ここでの to は前置詞なので、後ろは動名詞(-ing形)。 |
| He resembles with his father. | He resembles his father. / He takes after his father. | "resemble" は他動詞で前置詞不要なのに、日本語の「〜に似ている」の「に」につられて前置詞を入れてしまう。 |
| I'll take care your dog. | I'll take care of your dog. | 「〜の世話をする」の「の」を訳出し忘れ、of を落としてしまう。 |
| discuss about the plan | discuss the plan | 日本語の「〜について話し合う」の「について」を about と直訳し、他動詞 discuss に不要な前置詞をつけてしまう(この場合は句動詞ではなく他動詞そのものの誤用だが、前置詞の付け足し癖として頻出)。 |
| I'm interesting in music. | I'm interested in music. | 句動詞ではないが、"be interested in"(〜に興味がある)を分詞の形容詞と誤認し ing/ed を混同する。 |
| put off the meeting to tomorrow(意味の誤解) | postpone the meeting until tomorrow / put off the meeting until tomorrow | "put off"(延期する)を "put on"(着る)と混同したり、"off" のイメージ(オフにする=中止)と誤解する。 |
学習のポイント(和製英語・カタカナ語の落とし穴): 日本語の中には「テンションが上がる」「クレームをつける」のような和製英語がありますが、句動詞にも似た落とし穴があります。例えば "put on"(着る、身につける)はカタカナで「プットオン」という言葉として定着していないため直感的に意味が浮かびにくく、逆に "check"(チェックする=確認する)のようにカタカナ語化した単語は句動詞になった時(check out, check in, check up on など)に元の意味が広がりすぎて混乱しがちです。句動詞はカタカナ語の知識に頼らず、例文ごとフレーズとして覚えるのが遠回りに見えて一番の近道です。
日常でよく使う句動詞の自然な例文
- I usually get up at 6 a.m. on weekdays. (平日はたいてい朝6時に起きます)
- She turned down the job offer because of the low salary. (彼女は給料が低いという理由でその求人を断った)
- We need to figure out a solution before Friday. (金曜日までに解決策を見つけ出す必要がある)
- My grandmother brought up five children by herself. (祖母は一人で5人の子供を育てた)
- Can you turn down the volume? The baby is sleeping. (音量を下げてもらえますか?赤ちゃんが寝ています)
- He ran out of money before the end of the trip. (彼は旅行が終わる前にお金を使い果たした)
- They called off the outdoor event due to the typhoon. (台風のため彼らは屋外イベントを中止した)
- I'm trying to cut down on sugar these days. (最近、砂糖の摂取を減らそうとしています)
- Please fill out this form before your appointment. (予約の前にこの用紙にご記入ください)
- The plane took off an hour late because of the storm. (嵐のせいで飛行機は1時間遅れて離陸した)
よくある質問(FAQ)
Q. 句動詞と熟語(イディオム)は同じものですか?
A. 句動詞は熟語(イディオム)の一種です。すべての句動詞は「動詞を含む熟語」と言えますが、熟語には句動詞以外の形(形容詞+前置詞の熟語など)も含まれます。
Q. 分離可能か分離不可能かは、どうやって覚えればいいですか?
A. 明確な規則は存在せず、辞書(英英辞典が理想)で1つずつ確認しながら、例文ごと音読して覚えるのが最も確実です。多くの辞書では [sep.](separable)や [~ + obj + adv]の表記で区別が示されています。
Q. フォーマルな文章(レポートや試験の英作文)で句動詞を使ってもいいですか?
A. 使えますが、TOEIC・英検・大学入試の英作文や、ビジネスメールのようなフォーマルな文章では、句動詞の代わりに1語のフォーマルな動詞(例: give up → abandon, put off → postpone)に置き換えると、より洗練された印象になります。日常会話やカジュアルなメールでは句動詞の方が自然です。
まとめ:句動詞(Phrasal Verbs)学習の核心ルール
- 句動詞は「動詞+副詞」「動詞+前置詞」「動詞+副詞+前置詞」の組み合わせで、単語の意味を足し算しても訳せないことが多い熟語表現である。
- 「動詞+副詞」型(分離可能)は、目的語が代名詞のとき必ず動詞と副詞の間に挟む(turn it off)というルールが最重要。
- 「動詞+前置詞」型(分離不可能)は、前置詞と動詞を絶対に離さず、目的語は常に前置詞の直後に置く。
- "look forward to" のように前置詞の "to" で終わる句動詞の後は、動詞の原形ではなく動名詞(-ing形)が続く。
- 日本語の助詞(〜に、〜を、〜について)に引きずられて不要な前置詞をつけたり、逆に必要な前置詞を落としたりしないよう、句動詞は1つのフレーズごと丸暗記する。
- 意味を予測しようとせず、例文と一緒にセットで覚えることが、句動詞をマスターする一番の近道である。