英語には「特定の語と特定の前置詞がペアで使われる」という決まりがあります。これを日本の学校文法では「群前置詞」と区別して、依存前置詞(dependent preposition)または「前置詞を伴う語法」と呼びます。具体的には、"be interested in"(〜に興味がある)、"depend on"(〜次第だ)、"good at"(〜が得意だ)のように、動詞・形容詞・名詞が決まった前置詞とセットで使われる現象を指します。
日本語には前置詞という品詞自体が存在せず、代わりに「〜に」「〜を」「〜で」といった助詞が意味を担います。そのため日本人学習者は、日本語の助詞の感覚をそのまま英語に当てはめて前置詞を選んでしまい、誤りを犯しやすいというのが最大のつまずきポイントです。本記事では、中学・高校レベルの基礎を超えた上級レベルの依存前置詞を、日本語の発想との違いに注目しながら体系的に整理します。
依存前置詞とは何か:基本の定義と重要性
依存前置詞とは、特定の動詞・形容詞・名詞の後ろに、意味的なルールではなく「語彙的な決まり」として結びつく前置詞のことです。多くの場合、なぜその前置詞が使われるのかを論理的に説明することはできず、一つのセット(コロケーション)として暗記する必要があります。
形(公式)
パターン 語順 例 動詞+前置詞 V + prep + (名詞/動名詞) depend on you / insist on going 形容詞+前置詞 be + Adj + prep + (名詞/動名詞) be afraid of dogs / be capable of doing 名詞+前置詞 N + prep + (名詞/動名詞) reason for the delay / interest in art
大学入試の英作文や、TOEIC・英検の語彙問題でも頻出であり、ネイティブスピーカーが読んだときに「不自然な英語」と感じる最大の原因の一つが、この依存前置詞の誤用です。逆に言えば、ここを正確に使いこなせるようになると、英文の完成度が一段階上がります。
動詞と結びつく前置詞の上級パターン一覧
まずは中学英語で習う基本パターン(listen to, look at, wait for など)よりも一段上の、大学受験・資格試験レベルで問われる動詞+前置詞の組み合わせを見ていきましょう。
| 動詞+前置詞 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| account for | 〜を説明する、〜の原因となる | This factor accounts for the recent price increase.(この要因が最近の値上がりを説明している。) |
| consist of | 〜から成る | The committee consists of ten members.(その委員会は10人のメンバーから成る。) |
| refrain from | 〜を控える | Please refrain from smoking here.(ここでの喫煙はお控えください。) |
| comply with | 〜に従う | The company must comply with the new regulations.(その会社は新しい規則に従わなければならない。) |
| dispose of | 〜を処分する | We need to dispose of the old furniture.(古い家具を処分する必要がある。) |
| refer to | 〜に言及する、〜を参照する | The report refers to last year's data.(その報告書は昨年のデータに言及している。) |
| collaborate with | 〜と協力する | Our team collaborated with a foreign lab.(私たちのチームは海外の研究室と協力した。) |
| adhere to | 〜を遵守する | Employees must adhere to the dress code.(従業員は服装規定を守らなければならない。) |
| stem from | 〜に起因する | The problem stems from a lack of communication.(その問題はコミュニケーション不足に起因する。) |
| embark on | 〜に着手する | She embarked on a new career at 40.(彼女は40歳で新しいキャリアに乗り出した。) |
学習のポイント:これらの動詞は「自動詞+前置詞」で1つの他動詞的な意味を作っている点に注目してください。日本語で「〜を説明する」と訳すと "explain" と同じ他動詞感覚で "account the reason" のように前置詞を省略したくなりますが、account は自動詞なので for が必須です。逆に explain は他動詞なので "explain the reason"(前置詞なし)が正しく、"explain about the reason" とすると冗長・不自然になります。このaccount for と explain のペアは入試でも頻出の対比なので、セットで覚えましょう。
形容詞と結びつく前置詞の使い分け:of / about / with / at の違い
形容詞に続く前置詞は特に日本人が混乱しやすい領域です。同じ「〜について」という日本語訳になる語でも、前置詞が異なることがあります。
| 形容詞+前置詞 | 意味・ニュアンス | 例文 |
|---|---|---|
| be afraid of | (もの・こと)を恐れる | I'm afraid of spiders.(私はクモが怖い。) |
| be afraid for | (人の安否)を心配する | She's afraid for her son's safety.(彼女は息子の安全を案じている。) |
| be anxious about | 〜について不安だ | He's anxious about the exam results.(彼は試験結果について不安だ。) |
| be anxious for | 〜を切望する | They're anxious for peace.(彼らは平和を切望している。) |
| be satisfied with | 〜に満足している | I'm satisfied with the service.(私はそのサービスに満足している。) |
| be concerned about | 〜を心配している | We're concerned about climate change.(私たちは気候変動を心配している。) |
| be concerned with | 〜に関係している | This chapter is concerned with taxation.(この章は課税に関するものだ。) |
| be capable of | 〜する能力がある | She is capable of solving the problem.(彼女はその問題を解決する能力がある。) |
| be dependent on | 〜に依存している | The country is dependent on oil exports.(その国は石油輸出に依存している。) |
| be married to | 〜と結婚している | He has been married to her for 20 years.(彼は彼女と結婚して20年になる。) |
| be different from | 〜と異なる | This model is different from the previous one.(このモデルは以前のものと異なる。) |
ネイティブの感覚:be concerned about(心配している=感情)と be concerned with(関係している=内容・テーマ)の違いは、日本語ではどちらも「〜について」と訳せてしまうため区別が曖昧になりがちです。感情・心配を表すときは about、客観的な関連・テーマを表すときは with、という軸で覚えると整理しやすくなります。
名詞と結びつく前置詞:動詞形との違いに注意
名詞になると前置詞が変わる、あるいは動詞形と同じ前置詞を保持するケースが混在するため、セットで整理しておくことが重要です。
| 名詞+前置詞 | 対応する動詞・形容詞 | 例文 |
|---|---|---|
| interest in | be interested in | Her interest in music started young.(彼女の音楽への興味は幼い頃から始まった。) |
| reason for | — | There is no reason for concern.(心配する理由はない。) |
| solution to | solve(他動詞、前置詞なし) | We found a solution to the problem.(私たちはその問題の解決策を見つけた。) |
| answer to | answer(他動詞、前置詞なし) | This is the answer to your question.(これがあなたの質問への答えです。) |
| increase in | increase(自動詞・他動詞) | There was a sharp increase in sales.(売上の急増があった。) |
| respect for | respect(他動詞) | We have great respect for her work.(私たちは彼女の仕事に大きな敬意を持っている。) |
| access to | access(他動詞) | Students need access to the library.(学生は図書館へのアクセスが必要だ。) |
| demand for | demand(他動詞) | The demand for electric cars is rising.(電気自動車への需要が高まっている。) |
日本人が特に間違えやすいポイント:動詞 solve, answer, discuss, marry, reach, resemble, mention, obey などは他動詞であり、直後に前置詞を置かず目的語を直接続けます。しかし、これらが名詞形になると solution to, answer to のように前置詞が復活します。「動詞のときは前置詞なし → 名詞のときは前置詞あり」という切り替えを意識しましょう。
日本人学習者が特によく間違えるポイント(誤用パターンと正しい形)
| ❌ 誤 | ⭕ 正 | なぜ間違えるのか |
|---|---|---|
| discuss about the plan | discuss the plan | discuss は他動詞。日本語の「〜について話し合う」の「について」につられて about を入れてしまう。 |
| marry with her | marry her | marry も他動詞。「〜と結婚する」の「と」を with と直訳してしまう典型例。 |
| explain about me the reason | explain the reason to me | explain は「人」を直接目的語にできない他動詞。「人に説明する」は explain A to B の語順が必要。 |
| be good for English | be good at English | 「〜が得意」を漠然と for(〜のために)と結びつけてしまう。技能・能力には at を使う。 |
| depend of the weather | depend on the weather | フランス語・スペイン語系の語形(dépendre de)につられる例もあるが、日本人は「〜次第」という日本語から前置詞の予測ができず誤選択しやすい。 |
| interested for history | interested in history | 「興味」を「〜のために」の for と混同。in を使うのが正しい。 |
| arrive to the station | arrive at the station | 「〜に到着する」の「に」を to と直訳。狭い場所には at、広い場所(国・都市)には in を使う。 |
| listen the music | listen to the music | listen は自動詞。日本語の「音楽を聴く」の「を」につられて他動詞のように使ってしまう。 |
| consist in members | consist of members | consist of(構成要素)と consist in(本質がある)を混同する上級者特有のミス。 |
学習のポイント:日本語の「〜に」「〜を」「〜で」という助詞は英語の前置詞と一対一で対応していません。「〜に興味がある」の「に」は in、「〜に到着する」の「に」は at/in、「〜に依存する」の「に」は on というように、日本語の助詞ではなく英語側の動詞・形容詞ごとにセットで暗記するという発想の転換が不可欠です。単語カードを作る際は、単語単体ではなく "depend on", "be interested in" のように前置詞込みのチャンク(かたまり)で覚えることを強くおすすめします。
動名詞と結びつく依存前置詞:前置詞の後は原則 -ing 形
依存前置詞の直後に動詞が続く場合、前置詞の目的語は動名詞(-ing形)になるという原則があります。これは日本人が不定詞(to + 動詞の原形)と混同しやすい重要ルールです。
形(公式)
動詞・形容詞・名詞 + 前置詞 + 動名詞(-ing)
| 例文 | 日本語訳 |
|---|---|
| She is good at speaking English. | 彼女は英語を話すのが得意だ。 |
| He insisted on paying the bill. | 彼は勘定を払うと言い張った。 |
| I'm looking forward to seeing you. | あなたに会えるのを楽しみにしています。 |
| They succeeded in finishing the project. | 彼らはそのプロジェクトを完成させることに成功した。 |
| We are interested in learning Japanese culture. | 私たちは日本文化を学ぶことに興味がある。 |
日本人が特によく間違えるポイント:"look forward to" の to は不定詞の to ではなく前置詞の toであるため、後ろは動詞の原形ではなく -ing 形が続きます。"I'm looking forward to see you." は非常によくある誤りで、正しくは "I'm looking forward to seeing you." です。同様に、"be used to"(〜に慣れている)も前置詞の to なので "be used to doing"(used to do「かつて〜した」という助動詞的表現とは全く別物)となる点に注意しましょう。
| 混同しやすい表現 | 意味 | 後ろの形 |
|---|---|---|
| be used to + -ing | 〜に慣れている | 動名詞 |
| used to + 原形 | かつて〜したものだ | 動詞の原形 |
| look forward to + -ing | 〜を楽しみにする | 動名詞 |
| object to + -ing | 〜に反対する | 動名詞 |
前置詞のあとに続く語形についてのまとめ表
| 前置詞の後に続く要素 | 可否 | 例 |
|---|---|---|
| 名詞・代名詞 | ○ | interested in music / good at it |
| 動名詞(-ing) | ○ | good at cooking |
| 動詞の原形(不定詞のto以下) | × | ~~good at to cook~~ |
| that節 | 原則× | 通常は「前置詞+that節」は不可(例外あり) |
自然な英語例文で確認する依存前置詞の使い方
日常生活でよく使う主語・場面で、依存前置詞の感覚を身につけましょう。
- My father is proud of his garden.(父は自分の庭を誇りに思っている。)
- The new employee is unfamiliar with our system yet.(新入社員はまだ私たちのシステムに不慣れだ。)
- This medicine is effective against headaches.(この薬は頭痛に効く。)
- We apologized for the delay in shipping.(私たちは発送の遅れについて謝罪した。)
- The teacher congratulated the students on their success.(先生は生徒たちの成功を祝福した。)
- My grandmother suffers from arthritis.(祖母は関節炎を患っている。)
- The manager blamed the team for the mistake.(マネージャーはそのミスをチームのせいにした。)
- I am fond of rainy days.(私は雨の日が好きだ。)
- The company specializes in renewable energy.(その会社は再生可能エネルギーを専門としている。)
- She applied for a scholarship last month.(彼女は先月奨学金に応募した。)
まとめ:依存前置詞をマスターするための核心ルール
- 依存前置詞は「動詞・形容詞・名詞」ごとに決まった前置詞とセットで暗記する語彙事項であり、日本語の助詞「〜に/〜を/〜で」との一対一対応は成り立たない。
- discuss, marry, answer, reach, resemble, mention, obey などは他動詞であり、直後に前置詞を置かない(discuss about は誤り)。
- 前置詞の直後に動詞が続く場合は必ず動名詞(-ing)にする(look forward to doing、be used to doing など)。
- be concerned about(心配)と be concerned with(関係)のように、同じ日本語訳でも前置詞によって意味が変わる形容詞は特に注意して区別する。
- 名詞形になると前置詞が復活するパターン(solve → solution to、answer → answer to)を意識して覚える。
- 単語単体ではなく "depend on", "be interested in" のように前置詞込みのフレーズ単位で暗記するのが最も効率的な学習法である。