非制限用法の関係代名詞(非制限用法の関係詞節)とは何か
「非制限用法の関係代名詞」(英語では non-defining relative clauses、または non-restrictive relative clauses)とは、先行詞(すでに特定されている人やモノ)について、補足的な説明を付け加えるだけの関係代名詞節のことです。日本の学校英文法では「関係代名詞の非制限用法」「継続用法」と呼ばれ、コンマ(,)で区切られるのが最大の特徴です。
これに対して、先行詞がどれを指すのかを限定・特定するために必要な情報を加えるのが「制限用法(defining relative clauses/限定用法)」です。日本語には「コンマの有無で意味が変わる」という発想自体が存在しないため、日本人学習者がもっとも混乱しやすい英文法項目の一つと言われています。
なぜこの区別が重要かというと、コンマの有無によって文の意味そのものが変わってしまうからです。TOEIC・大学入試の英作文・英検のライティングでも頻出のポイントであり、ネイティブが読んだときに「誰について」「どの情報が必須か」を正しく理解できるかどうかに直結します。
例えば次の2文を比較してみましょう。
- My brother who lives in Osaka is a doctor.(大阪に住んでいる兄が医者です=私には兄弟が複数いて、そのうち大阪に住んでいる方が医者、という意味)
- My brother, who lives in Osaka, is a doctor.(私の兄は医者です。ちなみに彼は大阪に住んでいます=兄は一人しかいない前提で、大阪在住は補足情報)
コンマが1つ入るだけで「兄弟が複数いるかどうか」という前提まで変わってしまうのです。これは日本語訳だけを覚えていても絶対に気づけない違いです。
制限用法との違いを一発で理解する比較表
| 項目 | 制限用法(defining) | 非制限用法(non-defining) |
|---|---|---|
| 役割 | 先行詞を特定・限定する(どれのことか分かる情報) | 先行詞に補足情報を追加するだけ |
| コンマ | つけない | 必ずコンマで区切る |
| 情報の必要性 | 文の意味を成立させるために必須 | なくても文の基本的な意味は変わらない(削除可) |
| that の使用 | 使える(むしろ好まれる) | 使えない(非制限用法で that は不可) |
| 関係代名詞の省略 | 目的格なら省略できることが多い | 省略できない |
| 先行詞の性質 | 一般名詞(不特定・複数の可能性がある名詞) | 固有名詞、特定の人・モノ、既出の情報など |
| 読むときの間(ポーズ) | ポーズを置かずに続けて読む | コンマの位置で軽くポーズを置く |
学習のポイント:制限用法は「その関係詞節がないと、先行詞が誰・何なのか特定できない」文。非制限用法は「先行詞はすでに特定できていて、関係詞節は"おまけ情報"」の文、とイメージすると区別しやすくなります。日本語で言えば、非制限用法は「~だが、~で(そしてそれは)」というカッコ書き・補足説明に近い感覚です。
形(公式):非制限用法の基本パターン
非制限用法の関係詞節は、以下の3パターンで使われます。
1. 文末に置くパターン
| 形(公式) | 例文 |
|---|---|
| 先行詞, + 関係代名詞 + 動詞~. | Mr. Tanaka, who teaches English, is very popular.(田中先生は英語を教えていて、とても人気がある。) |
2. 文中に挿入するパターン(コンマ2つで挟む)
| 形(公式) | 例文 |
|---|---|
| 主語 + [先行詞, 関係代名詞 + 動詞~,] + 動詞~. | Tokyo, which is the capital of Japan, has a population of over 13 million.(東京は、日本の首都だが、1300万人以上の人口を抱えている。) |
3. 文全体を受ける which(継続用法の特殊形)
| 形(公式) | 例文 |
|---|---|
| 文, which + 動詞~. | He passed the exam, which surprised everyone.(彼は試験に合格した。そのことはみんなを驚かせた。) |
この3つ目のパターンは、先行詞が「1つの名詞」ではなく「前の文の内容全体」である点が非常に重要です。日本語にはこの発想がないため、初学者は which が何を指しているのか見失いがちです。
非制限用法で使う関係代名詞の一覧表
| 関係代名詞 | 先行詞 | 格 | 例文(日本語訳付き) |
|---|---|---|---|
| who | 人 | 主格 | My sister, who works in Tokyo, called me yesterday.(東京で働いている姉が昨日電話してきた。) |
| whom | 人 | 目的格(フォーマル) | Mr. Sato, whom I met at the conference, is a famous scientist.(私が学会で会った佐藤さんは有名な科学者だ。) |
| whose | 人・モノ | 所有格 | This is Ms. Yamada, whose book became a bestseller.(こちらは山田さんです。彼女の本はベストセラーになりました。) |
| which | モノ・動物・文全体 | 主格・目的格 | The Sky Tree, which was completed in 2012, is 634 meters tall.(スカイツリーは2012年に完成し、高さ634メートルだ。) |
| where | 場所 | 場所を表す関係副詞 | I visited Kyoto, where my grandmother was born.(私は京都を訪れた。そこは祖母が生まれた場所だ。) |
| when | 時 | 時を表す関係副詞 | I still remember 2011, when the big earthquake hit Japan.(私は2011年のことをまだ覚えている。その年、日本を大地震が襲った。) |
重要な注意点:非制限用法では that は絶対に使えません。「制限用法の that =限定して1つに絞る働き」と「非制限用法=すでに特定済みで補足するだけ」という役割が根本的に矛盾するためです。また、非制限用法では関係代名詞を省略することも一切できません。この2点は入試・資格試験で頻出の減点ポイントです。
主な用法
- 固有名詞(人名・地名など)に補足説明を加える:固有名詞はそれ自体で「どれのことか」が既に特定されているため、非制限用法しか使えません。
-
Mount Fuji, which is Japan's highest mountain, attracts many climbers every summer.(富士山は日本一高い山だが、毎年夏に多くの登山者を惹きつける。)
-
文脈上すでに特定されている名詞(唯一の存在)に説明を加える:「私の母」「私の唯一の弟」のように、世界に一人しかいない対象に使います。
-
My mother, who is 68 years old, still works part-time.(私の母は68歳だが、今もパートで働いている。)
-
前の文全体の内容を受けて、感想・結果・評価を付け加える(which の特殊用法):この用法の which は「そのこと」という意味で、先行詞は名詞ではなく直前の節全体です。
-
She apologized immediately, which impressed me a lot.(彼女はすぐに謝った。そのことに私はとても感心した。)
-
すでに1つしかない・数がすでに確定しているものに追加情報を与える:「唯一のもの」「既出の特定のもの」を説明する場合に使われます。
-
The Eiffel Tower, which was built in 1889, is one of the most visited monuments in the world.(エッフェル塔は1889年に建てられ、世界で最も訪問者の多い建造物の一つだ。)
-
whose を使って所有関係の補足情報を加える:人にもモノにも使えます。
-
This novel, whose author is still unknown, has sold millions of copies.(この小説は、著者が今も不明だが、何百万部も売れている。)
-
場所・時を表す関係副詞(where/when)を使って補足説明を加える:先行詞がすでに特定の場所・時である場合に用います。
- We stayed at a small hotel in Kyoto, where we had a wonderful view of the mountains.(私たちは京都の小さなホテルに泊まったが、そこからは山の素晴らしい景色が見えた。)
日本人が特につまずきやすいポイント
日本語には「関係代名詞」という文法カテゴリーがなく、修飾語は常に名詞の前に置かれます(例:「大阪に住んでいる兄」)。そのため、英語で名詞の後ろに情報を続けて置く発想自体に慣れるまで時間がかかります。さらに、日本語訳だけを見ると制限用法・非制限用法の文が同じ訳(「~する〇〇」)になってしまうことが多く、コンマの有無に注意を払う習慣がつきにくいのです。
| ❌ 誤 | ⭕ 正 | なぜ |
|---|---|---|
| My father, that runs a small shop, is very kind. | My father, who runs a small shop, is very kind. | 非制限用法では that は使用不可。必ず who / which / whose などを使う。 |
| My wife who I love very much works as a nurse.(唯一の妻なのにコンマなし) | My wife, who I love very much, works as a nurse. | 「妻」は通常1人しかいない特定の人物なので、補足情報にはコンマが必要(非制限用法)。コンマがないと「複数いる妻の中で愛している方の妻」という不自然な意味になる。 |
| Tokyo, is the capital of Japan, has many parks. | Tokyo, which is the capital of Japan, has many parks. | 関係代名詞 which を省略してはいけない。非制限用法では関係代名詞の省略は不可。 |
| Japan, that I was born in, is an island country. | Japan, which I was born in, is an island country.(または Japan, in which I was born, ...) | 非制限用法では that が使えないため、which に置き換える必要がある。 |
| He said he was sorry, that made me feel better. | He said he was sorry, which made me feel better. | 前文全体を受ける用法では which を使う。that では代用できない。 |
| My son, who's name is Kenji, is a college student. | My son, whose name is Kenji, is a college student. | who's(= who is)と whose(所有格)のスペルミス。発音が同じため混同しやすい。 |
ネイティブの感覚:ネイティブスピーカーは、話すときに非制限用法の部分で必ず軽く間(ポーズ)を置き、声のトーンをわずかに落として「これは補足だよ」という合図を出します。書き言葉のコンマは、その"間"を文字に起こしたものだと考えると、コンマを打つ位置が体感的につかみやすくなります。逆に言えば、音読練習をするときにコンマの位置で意識的にポーズを入れる練習をすると、非制限用法の感覚が自然と身につきます。
実践でよく使う自然な英文例
- Ken, who has lived in Canada for ten years, speaks English fluently.(10年間カナダに住んでいるケンは、英語を流暢に話す。)
- This restaurant, which opened last month, is already very popular among young people.(先月オープンしたこのレストランは、若者の間ですでにとても人気がある。)
- Our new manager, whose previous job was in finance, has great analytical skills.(前職が金融関係だった新しい部長は、優れた分析能力を持っている。)
- I finally finished the report, which took me three whole days.(私はついにレポートを書き終えたが、それには丸3日かかった。)
- Nara, where many old temples remain, was once the capital of Japan.(多くの古い寺院が残る奈良は、かつて日本の首都だった。)
- My grandfather, who fought in the war, rarely talks about his experiences.(戦争を経験した祖父は、その経験についてめったに話さない。)
- The new smartphone, which costs over 150,000 yen, has already sold out.(15万円以上するその新しいスマートフォンは、すでに売り切れてしまった。)
- She invited her colleagues, none of whom she had known for very long, to her wedding.(彼女は、それほど長く知っているわけではない同僚たちを結婚式に招待した。)
よくある誤りとその修正(練習形式)
| 問題文 | 誤答例 | 正答 | 解説 |
|---|---|---|---|
| 富士山は日本一高い山だ、そして毎年多くの人が登る。 | Mt. Fuji that is the highest mountain in Japan is climbed by many people every year. | Mt. Fuji, which is the highest mountain in Japan, is climbed by many people every year. | 固有名詞には非制限用法を使い、コンマ+which(thatは不可)。 |
| 私の父は先生だが、日曜日はいつも忙しい。 | My father who is a teacher is always busy on Sundays.(父が複数いるかのような誤解) | My father, who is a teacher, is always busy on Sundays. | 「父」は一人しかいない存在なのでコンマが必須。 |
| 彼は謝らなかった。そのことが私を怒らせた。 | He didn't apologize, that made me angry. | He didn't apologize, which made me angry. | 前文全体を受ける場合は which。that は使用不可。 |
まとめ:非制限用法の関係代名詞で押さえるべき核心ルール
- 非制限用法は「先行詞を特定するため」ではなく「補足情報を加えるため」の関係詞節であり、必ずコンマで区切る。
- コンマの有無で文の意味そのものが変わる(例:兄弟が1人か複数いるか)ため、機械的な暗記ではなく意味の違いを理解することが重要。
- 非制限用法では that は使用不可、関係代名詞の省略も不可。この2点は特に試験で狙われやすい。
- which は「名詞」だけでなく「前の文(節)全体」を先行詞にできる特殊な用法を持つ(this / it に近い感覚)。
- 固有名詞・世界に一人(一つ)しかない特定の対象を説明するときは、基本的に非制限用法(コンマあり)になる。
- 音読の際にコンマの位置で軽くポーズを置く練習をすると、ネイティブの感覚に近づける。