must / mustn't とは?意味と使い方の基本
英語の助動詞 must(マスト)と mustn't(マスントゥ、= must not)は、どちらも「話し手の判断による強い義務・確信」を表す助動詞です。日本語の教科書では「must=〜しなければならない」「mustn't=〜してはいけない」と単純に対で覚えがちですが、これは英文法学習者が最も誤解しやすいポイントです。
実は must の否定形 mustn't は、must の意味をそのまま否定したものではありません。must が「義務(〜すべき)」を表すのに対し、mustn't は「禁止(〜してはいけない)」を表し、「〜する必要はない」という意味にはならないのです。「〜する必要はない」を表したいときは don't have to や don't need to を使います。この非対称性を最初に理解しておくことが、must/mustn't を正しく使いこなす最大のコツです。
- She must finish the report today.(彼女は今日中にそのレポートを終えなければならない。)
- You mustn't tell anyone about this.(このことは誰にも言ってはいけない。)
- You don't have to finish it today.(今日中に終える必要はない。)※ mustn't とは全く違う意味
must の形(公式)と活用一覧
must は法助動詞(modal verb)の一つで、主語の人称や数によって形が変化しない、活用のない特殊な動詞です。後ろには必ず動詞の原形(原形不定詞)を置きます。
| 文の種類 | 形(公式) | 例文 |
|---|---|---|
| 肯定文 | 主語 + must + 動詞の原形 | I must go now.(もう行かなければならない。) |
| 否定文 | 主語 + must not(mustn't)+ 動詞の原形 | You mustn't smoke here.(ここで喫煙してはいけない。) |
| 疑問文 | Must + 主語 + 動詞の原形 ...? | Must I answer now?(今すぐ答えなければなりませんか。) |
| 過去の義務 | had to + 動詞の原形(must には過去形がない) | I had to leave early.(早く出なければならなかった。) |
| 未来の義務 | will have to + 動詞の原形 | You will have to register soon.(すぐに登録しなければならなくなるだろう。) |
学習のポイント: must には三人称単数の -s も、過去形 musted のような形も存在しません。主語が He でも She でも It でも He must(原形のまま)です。また must は疑問文・否定文を作るときに do/does を必要としない点も、一般動詞との大きな違いです(Does he must...? は誤り)。
must の主な用法(義務・確信の2つの顔)
must には大きく分けて「義務・命令」を表す用法と、「強い確信・推量」を表す用法の2つがあります。この2つを区別できるかどうかが、英文の意味を正確に読み取る鍵になります。
- 話し手自身が感じる強い義務・必要性:規則ではなく、話し手の個人的な判断で「〜すべきだ」と感じるときに使う。
- I must call my mother tonight.(今夜は母に電話しなければならない。)
- 強い勧め・推奨(親しみを込めたアドバイス):日常会話で「絶対〜するべきだよ」と勧めるときによく使う。
- You must try this restaurant—it's amazing!(このレストランは絶対行くべきだよ、最高なんだ!)
- 禁止(mustn't の中心的な用法):規則・警告として「〜してはいけない」と強く禁じる。
- Passengers mustn't open the doors while the train is moving.(電車が動いている間、乗客はドアを開けてはいけません。)
- 強い確信・論理的な推量(現在のことについて「〜に違いない」):肯定文で使い、否定の推量には can't(〜のはずがない)を使う点に注意。
- He must be tired after such a long flight.(あんなに長いフライトの後だから、彼は疲れているに違いない。)
- That can't be true.(それは本当のはずがない。)※ mustn't be true とは言わない
- 過去の出来事に対する強い確信(must have + 過去分詞):過去のことを「〜だったに違いない」と推量する。
- She must have forgotten our meeting.(彼女は私たちの打ち合わせを忘れてしまったに違いない。)
must / have to / should / mustn't / don't have to の違い比較表
日本人学習者がもっとも混乱するのが、これら義務系の助動詞・準助動詞の使い分けです。特に「must」と「have to」は日本語訳がどちらも「〜しなければならない」になるため区別が難しく、また「mustn't」と「don't have to」は正反対の意味になるため要注意です。
| 表現 | 意味 | ニュアンス・使う場面 | 例文 |
|---|---|---|---|
| must | 〜しなければならない | 話し手自身の主観的な判断・強い意志 | I must study harder.(自分でそう思って) |
| have to | 〜しなければならない | 外部の規則・状況による客観的な義務 | I have to wear a uniform at work.(会社の規則で) |
| should / ought to | 〜すべきだ | 助言・弱い義務、従わなくてもよい | You should see a doctor.(アドバイス) |
| mustn't | 〜してはいけない | 強い禁止 | You mustn't park here.(規則で禁止) |
| don't have to / don't need to | 〜する必要はない | 義務がない、任意である | You don't have to pay now.(今払わなくてもよい) |
ネイティブの感覚: 実際の会話では must はかなり強く、フォーマルで押し付けがましく聞こえることがあるため、日常会話では have to のほうが圧倒的によく使われます。特にイギリス英語よりアメリカ英語で must は硬い印象を与えやすく、指示書・案内表示・規則文(Passengers must show their ticket. など)でよく見かける一方、友人同士の会話では have to や need to が自然です。
日本人がよく間違えるポイント
| ❌ 誤 | ⭕ 正 | なぜ間違いか |
|---|---|---|
| You mustn't finish it today.(今日終える必要はない、のつもりで) | You don't have to finish it today. | mustn't は「禁止」。「不必要」を表すには don't have to / don't need to を使う。 |
| Does he must go?(疑問文を作ろうとして) | Must he go? | must は法助動詞なので do/does を使わず、主語の前に must を出す。 |
| He musted go there yesterday.(過去形にしようとして) | He had to go there yesterday. | must には過去形が存在しない。過去の義務は had to で表す。 |
| She must to go now.(不定詞の to をつけてしまう) | She must go now. | must の後ろは動詞の原形。to不定詞にはしない(ought to と混同しやすい)。 |
| He must not be at home now.(「家にいないに違いない」のつもりで) | He can't be at home now. | 現在の事柄について「〜のはずがない」という否定の推量には can't を使う。mustn't は禁止の意味にしかならない。 |
| She must have go there.(過去の推量を作ろうとして) | She must have gone there. | must have の後ろは過去分詞。動詞の原形にしない。 |
これらの誤りの多くは、日本語の「〜しなければならない」「〜してはいけない」という表現を機械的に英語に一対一で当てはめようとすることから生じます。英語では「義務(must/have to)」と「禁止(mustn't)」と「不必要(don't have to)」がそれぞれ独立した概念として存在するため、日本語の否定表現をそのまま mustn't に変換しないよう注意しましょう。
自然な英語例文で覚える must / mustn't
- We must leave before it gets dark.(暗くなる前に出発しなければならない。)
- I must admit, your idea is brilliant.(正直に言うと、君のアイデアは素晴らしいね。)
- Employees must wash their hands before returning to work.(従業員は仕事に戻る前に手を洗わなければならない。)
- You mustn't touch the paintings in this gallery.(このギャラリーでは絵に触れてはいけません。)
- Children mustn't play near the construction site.(子供たちは工事現場の近くで遊んではいけない。)
- This must be the most delicious ramen I've ever had.(これは今まで食べた中で一番美味しいラーメンに違いない。)
- They must have missed the last train.(彼らは終電を逃したに違いない。)
- You must be joking!(冗談でしょう!/本気のはずがない!)
- All visitors must sign in at the front desk.(すべての来訪者は受付で記帳しなければなりません。)
- We mustn't waste any more time.(もうこれ以上時間を無駄にしてはいけない。)
まとめ:must / mustn't の核心ルール
- must は「話し手の主観的な強い義務(〜すべきだ)」と「強い確信・推量(〜に違いない)」の2つの用法を持つ法助動詞。
- mustn't(must not) は「強い禁止(〜してはいけない)」を表し、「〜する必要はない」という意味にはならない。
- 「〜する必要はない」は don't have to / don't need to で表す。mustn't と混同しないこと。
- must には過去形がなく、過去の義務は had to、未来の義務は will have to で代用する。
- 現在のことについて「〜のはずがない」と否定の推量をするときは mustn't ではなく can't を使う。
- 過去の出来事への強い推量は must have + 過去分詞(〜だったに違いない)の形になる。
- 日常会話では must はやや硬い響きを持つため、客観的な義務や口語では have to がより自然に使われる場面が多い。