英語の this・that・these・those は「指示詞(demonstratives)」と呼ばれ、日本語の「これ・それ・あれ/この・その・あの」に対応する重要な文法項目です。会話でも英作文でも使用頻度が非常に高いにもかかわらず、日本語の「これ・それ・あれ」という3段階の距離感と英語の「this/these(近い)・that/those(遠い)」という2段階の距離感がずれているため、日本人学習者がもっとも誤用しやすいポイントの一つです。
この記事では、指示形容詞(名詞を修飾する用法)と指示代名詞(名詞の代わりに使う用法)の両方について、公式・用法・比較・誤用例までを体系的に整理します。
this that these those の基本の形(公式)と一覧表
指示詞は「単数か複数か」「近いか遠いか」という2つの軸で決まります。この2×2のマトリクスをまず頭に入れることが、正確な運用への第一歩です。
| 近い(この/これ) | 遠い(あの・その/あれ・それ) | |
|---|---|---|
| 単数(可算名詞の単数形・不可算名詞) | this | that |
| 複数(可算名詞の複数形) | these | those |
形(公式)
this + 単数名詞 → this book(この本)
that + 単数名詞 → that book(あの本)
these + 複数名詞 → these books(これらの本)
those + 複数名詞 → those books(あれらの本)
指示代名詞として単独で使う場合も、名詞を伴わないだけで距離感のルールは同じです。
| 用法 | 肯定文 | 否定文 | 疑問文 |
|---|---|---|---|
| 指示形容詞(+名詞) | This is my pen. | This is not my pen. | Is this your pen? |
| 指示代名詞(単独) | This is a pen. | This is not a pen. | Is this a pen? |
| be動詞との一致 | This/That is ~(単数扱い) | These/Those are ~(複数扱い) | — |
学習のポイント: this・that は常に単数扱い(be動詞は is)、these・those は常に複数扱い(be動詞は are)です。名詞が複数形になれば指示詞も複数形に揃える、という「呼応(一致)」を忘れないようにしましょう。日本語の「これ」「それ」は単数・複数で形が変わらないため、この一致を忘れる学習者が非常に多いです。
this that these those の主な用法(用法別ルールと例文)
1. 物理的な距離を表す(空間的な近さ・遠さ)
自分の近く(手が届く範囲)にあるものには this / these、離れた場所にあるものには that / those を使います。
- This bag is mine, and that one over there is yours.
(このバッグは私のもので、あそこにあるあのバッグはあなたのです。) - These shoes are too small for me.
(これらの靴は私には小さすぎます。) - Look at those birds in the sky.
(あの空にいる鳥たちを見て。)
2. 時間的な近さ・遠さを表す
現在・直近の話題には this、過去や少し離れた時点の話題には that を使います。
- This week has been really busy.
(今週は本当に忙しかった。) - That summer, we traveled to Okinawa together.
(あの夏、私たちは一緒に沖縄へ旅行しました。) - I still remember that day clearly.
(あの日のことを今でもはっきり覚えています。)
3. すでに述べた内容を指す(文脈上の指示)
直前に述べた話題や情報をまとめて指すとき、that(単数)/those(複数)がよく使われます。this も直前の内容を指せますが、話し手の関心が「今、目の前にある話題」として強調されるニュアンスがあります。
- He said he'd help, but that turned out to be a lie.
(彼は手伝うと言ったが、それは嘘だとわかった。) - This is exactly what I wanted to say.
(これがまさに私が言いたかったことです。)
4. 電話での名乗り・確認(会話特有の慣用表現)
電話では自分を this、相手を that で表すという、日本語の発想にはない独特のルールがあります。
- Hello, this is Tanaka speaking.
(もしもし、田中です。) - Hi, is that Mr. Smith?
(もしもし、スミスさんですか。)
5. these / those で「複数のもの・人」をまとめて紹介・言及する
複数の名詞をひとまとめに紹介したり、既出の複数のものを指したりします。
- These are my colleagues, Ken and Yuki.
(こちらは私の同僚のケンとユキです。) - I don't like those kinds of jokes.
(私はああいう種類の冗談は好きではありません。)
6. that / those + 関係詞節で「〜する人・もの」を表す(文語的・フォーマルな用法)
「that / those who ~」のように、後ろに修飾語(関係代名詞節や前置詞句)を伴って「〜な人々/もの」という総称的な意味を作ります。この用法は日本語に対応する表現が存在しないため、直訳しようとして混乱しがちです。
- Those who arrive late will not be admitted.
(遅れて到着する人は入場できません。) - The results are similar to those of the previous study.
(その結果は前回の研究の結果と似ています。= the results of the previous study の言い換え)
7. this / that を強調・感情表現に使う(口語)
驚き・強調・不満などの感情を込めて使われる口語的な用法です。
- I can't believe this!
(こんなことが信じられない!) - That's amazing!
(それはすごい!)
this that these those と it / one との違い(比較表)
指示代名詞 this/that と、代名詞 it・one はいずれも「前に出てきた名詞の代わり」に使えるため混同しやすい項目です。
| 語 | ニュアンス | 例文 |
|---|---|---|
| this / that | 話題・状況・物を明確に「指し示す」。文脈上の強調がある | That sounds great.(それはいいですね。) |
| it | 単に前に出た特定の名詞を中立的に受ける | I bought a book. It is interesting.(それ=その本、は面白い。) |
| one | 前に出た名詞と「同じ種類の別の一つ」を指す(不特定) | I need a pen. Do you have one?(ペンが必要です。〈同種の〉一本持っていますか。) |
ネイティブの感覚: it は「もう話題に上って特定されているもの」をそのまま受けるだけですが、this/that には「これ/あれだよ」と指し示す気持ち、あるいは状況全体への評価・感情のニュアンスが乗ります。That's a good idea.(それはいい考えですね)は、単に it を使うよりも相手の発言そのものへの反応・評価が強く感じられます。
日本人がよく間違えるポイント(誤用と正しい表現)
| ❌ 誤り | ⭕ 正しい表現 | なぜ間違いか |
|---|---|---|
| ❌ This are my books. | ⭕ These are my books. | 名詞が複数形(books)なら指示詞も these に揃える。日本語の「これ」は単数・複数で形が変わらないため、this のまま複数名詞を続けてしまうミスが非常に多い。 |
| ❌ That book are interesting. | ⭕ That book is interesting. | that は単数扱いなので be動詞は is。book という単数名詞につられず、直後の be動詞の形を正しく選ぶ。 |
| ❌ I like these music. | ⭕ I like this music. | music は不可算名詞であり、常に単数扱い。「複数っぽく感じる」不可算名詞(music, information, furniture など)に these/those を使う誤りが多い。 |
| ❌ Hello, this is Tanaka. Are you Mr. Smith?(電話で) | ⭕ Hello, this is Tanaka. Is that Mr. Smith? | 電話での「相手」を指すときは this ではなく that を使うのが英語の慣用。日本語の発想では「あなたは」と you を使いたくなるが、英語では that が定型表現。 |
| ❌ Those who is late cannot enter. | ⭕ Those who are late cannot enter. | those は常に複数扱いなので、続く動詞も are にする。who の後ろの動詞を that 節の主語の数で単数にしてしまう誤りに注意。 |
| ❌ この本と話しているとき: I like that book.(自分の手元にある本を指して) | ⭕ I like this book. | 自分の近くにあるもの(手に持っている・目の前にある)には this を使う。日本語で「その本」と言いたくなる感覚から that を選んでしまうが、英語では物理的距離が基準。 |
| ❌ That is important to study English every day.(前置きなしに漠然とした一般論として) | ⭕ It is important to study English every day. | 形式主語として一般的な事柄を述べる場合は it を使う。特定の話題を「指し示す」わけではないので that は不自然。 |
自然な英語例文で学ぶ this that these those
- This coffee is too hot to drink right now.
(このコーヒーは今飲むには熱すぎます。) - Could you pass me that magazine on the table?
(テーブルの上のあの雑誌を取ってもらえますか。) - These cookies smell amazing.
(これらのクッキーはとてもいい匂いがします。) - My parents still live in that house where I grew up.
(両親は私が育ったあの家に今も住んでいます。) - Those who work hard usually succeed in the end.
(努力する人は、たいてい最後には成功します。) - I've never seen this kind of insect before.
(こんな種類の昆虫は今まで見たことがありません。) - That's exactly what I mean.
(それがまさに私の言いたいことです。) - We should finish these reports by Friday.
(金曜日までにこれらの報告書を仕上げるべきです。)
まとめ:this that these those の核心ルール
- 単数か複数かで形を選ぶ: this/that は単数(不可算名詞も含む)、these/those は複数の可算名詞に対応する。
- 距離感は2段階: 物理的・心理的・時間的に「近い」ものは this/these、「遠い」ものは that/those。日本語の「これ・それ・あれ」の3段階とはズレることを常に意識する。
- be動詞の一致を忘れない: this/that is、these/those are が基本パターン。
- 電話での特殊用法: 自分は this、相手は that と表現する定型表現を覚える。
- that/those + 関係詞節は「〜な人・もの」という総称表現になり得る、ややフォーマルな用法として押さえる。
- it・one との使い分けにも注意し、単なる代用(it)、同種の別物(one)、指し示し・強調(this/that)を区別する。